医療法人博侑会 吉岡医院

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食道胃接合部が語るもの  その① ~逆流性食道炎~

2013年1月29日

皆さんは、
『食道胃接合部』
という言葉を聴いたことがありますか?

文字通り、胃と食道がつながっているところ、です。
それは体の表面で言うと、
みぞおちのあたりになります。

左右の一番下の肋骨が真ん中でくっつくと、
そこには胸骨という骨のでっぱりがあります。
そのすぐ左下あたりになるかとおもいます。

よく患者様で、
「みぞおちの辺りが痛みます。」
と来られます。

それは言い換えれば、
食道胃接合部付近で何かが起こっているかもしれない、
ということになります。

胃カメラで見ると、食道胃接合部は、
ここまでが食道で、ここからが胃と
区別することが出来ます。

それは、
粘膜を構成する組織の種類が違うからです。

食道粘膜は、扁平上皮という組織で構成され、
皮膚などに近い組織で、
色が比較的白っぽいです。

胃粘膜は、胃酸や粘液を出す腺という構造が主体の
腺上皮で、色は茶色です。
小腸や大腸、直腸と同じ組織です。

胃カメラで見ると、食道の白っぽいトンネルの先に、
茶色の胃粘膜が現れることになり、
その境界はかなり明瞭に観察できます。

千本通りを北上すると、仏教大学を越えたあたりから、
いつの間にか北山通りになりますが、
そんなあいまいなものではありません。

一般道から高速道路にのる時のように、
もちろん料金所はありませんが、
ここまでは食道で、ここから胃です、という感じです。

この境が、食道胃接合部になります。

胃カメラをするとき、食道胃接合部は、
最も注意深く観察すべきポイントの一つです。
決して素通りしてはいけません。

ここにはいくつか重要な病気が存在します。

有名なのは、
「逆流性食道炎」です。

逆流性食道炎は、最近特に多くなった病気で、
胃の中で分泌された胃酸の一部が、
食道に逆流することによって起こる病気です。

食道には本来、胃酸がありませんので、
食道粘膜は胃酸に負けてしまいます。
ある程度の酸が逆流すると、
食道粘膜はやけどしたように、赤くただれます。

そのただれ(びらんといいます)の程度によって、
内視鏡での逆流性食道炎の重症度(グレード)が決まります。
現在はロサンゼルス分類がひろく用いられています。

ロサンゼルス分類では、胃カメラの所見で
グレードA~Dまで分けています。
A、Bが軽症型、C、Dが重症型です。

ところが逆流性食道炎という病気には、
必ずしも症状と一致した食道粘膜のびらんが
見られない場合があります。

つまり、症状としてはかなり強い、
みぞおちの痛み、胸焼けなどがあるにもかかわらず、
内視鏡ではびらんが無いものです。

先のロサンゼルス分類は、1994年ごろに
欧米が中心となって提唱されました。

欧米人と異なり、
日本人では軽症型が90%と圧倒的多く、
そのなかでびらんの無い人も多くいたのです。

そこで日本では、
ロサンゼルス分類グレードAより、
さらに軽症のグレードMという分類を追加しました。

Mは、minimal change(微小変化)のM、
びらんは無いけれど、わずかな粘膜の白色混濁を捉え、
逆流性食道炎の所見としたものです。

また、全く所見の無いものは、グレードN、
non-erosive、非びらん性逆流性食道炎という
分類も加えました。

これは、当時から日本では高性能かつ高画質のカメラが、
広く普及していたために可能となった分類といわれています。
(日本の消化器内視鏡の技術は、世界のトップレベルです)

欧米ではこの基準は浸透していないようです。
ひとつは内視鏡の画質の問題(当時の話と思います)、
それと白色混濁は、見る人により判断が一定しないことでした。

それでも私も含め、グレードMは、
日本では診断されている場合が多いと思います。

内視鏡で見る食道胃接合部の粘膜白濁は、
逆流性食道炎のサインであり、無視できないこと、
日本人にグレードMの患者さんが多いことからと思います。

このように、胃食道接合部の観察は、
とても繊細な作業で、
キチンと見るために神経を使います。

そこには、たとえわずかな変化でも、
逆流性食道炎を示唆する、
さまざまな情報が隠れています。

マニアックな先生はそこの観察で、
その患者さんが、普段どちらを下にして
寝ているのか分かるそうです。

胃酸の逆流でびらんができる部位が、
重力によって決まってくるからだそうで、
私もそういう目線でカメラをすると、
確かにそうかも知れないなと思うこともあります。

たとえ食道胃接合部に、
びらんや白濁といった変化がなかったとしても、
NBI(狭帯域光観察)における、
毛細血管のわずかな増生や拡張など、
食道胃接合部はいろんなことを語りかけてきます。


もし患者さんから、
「食道胃接合部に変化がないのに、
どうして私は逆流性食道炎と言えるのですか?」
と聞かれたら、こう答えます。

「愛と、同じなんです。」

「それは目に見えないが、
確かに感じることができる・・・」

・・・さすがに、無理があります。

次回は、「その② ~バレット食道~」を
お送りする予定です。
(本当でしょうか?)

京都市上京区 消化器内科
吉岡医院 吉岡幹博