京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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糖尿病の新薬:SGLT2阻害薬

2014年4月17日

皆さんお元気ですか?
朝と昼の寒暖の差が激しい毎日ですが、
体調管理は大丈夫でしょうか?

今回は糖尿病の新薬の話です。

約4年ぶりに、
糖尿病の全く新しい機序のお薬が、
本日発売になりました。

今までの糖尿病のお薬は、
大きく分けると3種類に分かれます。

ⅰ:インスリンの分泌を促進するお薬
ⅱ:インスリンが効き易くなるように体質改善する薬
ⅲ:腸からの糖分の吸収を抑えるお薬

大半のお薬はⅰまたはⅱです。
つまりはインスリンの作用を利用して、
血糖を下げていたのです。

今回の新薬は、
血液に過剰になった糖分を、
尿中に排泄するものです。

尿は正常の状態でも、
過剰な糖分は一部尿中に排泄されます。
糖尿病の方はその名前の通り、
尿中にたくさん糖分が出ています。

腎臓に流れてきた血液は、
糸球体でまず尿のもとが作られます。
尿のもとは尿細管を通り、
そこで過剰な糖分や電解質の調節を行い、
最終的な尿となり排泄されます。

糖(グルコース)の一部は、
尿細管を通じて血液内に再度取り込まれます。

糖尿病になると、
血液中にも尿のもとにも、
過剰に糖分が流れている状態になります。

その時でもやはり尿細管で、
グルコースの再吸収が起こりますので、
糖尿病では常に高血糖の状態となります。

この新薬はその尿細管に作用し、
一度尿中に出た糖分を、
血液中に再度取り込むシステムをブロックします。

その際に関与するのが、
SGLT2という、
グルコースの再吸収を行う輸送体です。

尿中に大量の過剰な糖分を排泄させることにより、
血液中の糖分を減らし、
血糖値を下げるというものです。

今までのお薬とは全く作用が異なります。

糖尿病の治療で懸念される、
低血糖の危険性が少ないとされているのも、
このお薬の利点と考えられています。

どれくらいの効果かというと、
空腹時血糖で30~40㎎/dl低下し、
食後血糖で60~70mg/dl低下するそうです。

HbA1cは、0.8~1%低下するとのことです。
(もちろん個人差は大いにありますが)

さらにこのお薬のいいところは、
血糖が低下するために、
それを補おうと体が脂肪を燃焼します。

そのため体重は3-4%自然に減少し、
メタボの方で高血圧や高脂血症がある方にとっては、
その数値までも改善する事があるそうです。

このようにいいことも多いのですが、
やはりお薬なので副作用もあります。

ⅰ: 頻尿・多尿・枯渇・脱水

尿中のグルコースが増加すると、
それに伴って尿量も増えます。
もともと糖尿病の方は、頻尿、多尿、口喝があるのですが、
それが強くなるそうです。

また尿量増加に伴い脱水傾向になるため、
特に脱水気味の高齢者では、
腎機能が悪化したり、
脳梗塞のリスクが増える可能性があります。

ⅱ: 尿路感染症・性器感染症の増加

特に女性で起こりやすくなるそうです。
尿中の糖の増加が原因とされています。

ⅲ: 低血糖

頻度や重症の患者さんは低いそうですが、
他の糖尿病の薬剤と併用されていると、
起こる可能性があるとのことです。

ⅳ: 筋肉量の減少

血糖値が下がるため、
体が逆に血糖を上げようとして、
脂肪や筋肉を分解し、
エネルギーを得るために起こります。

脂肪の燃焼は有益なことが多いのですが、
筋肉量の減少は良くありません。
やせている方に使用するときは注意が必要です。

以上のような主な副作用があるため、
あまり高齢者には向かないようです。

このお薬が合う患者様のイメージは、
65歳以下、肥満あり、炭水化物の摂取が多く、
いわゆるメタボの方がいいとのことです。

投与してしばらくの間は、
体重測定、尿検査、血液検査を頻回に行い、
副作用に気をつけなければなりません。

新薬は期待が大きい反面、
発売以降にわかってくる、
重大な副作用も少なくありません。

投与がふさわしい患者様を選び、
副作用等の説明も十分行ったうえで、
慎重な経過観察が必要となります。

当院でも処方可能となりましたが、
やはり最初は慎重に、
今後の情報に注意しながら使用したいと思います。