京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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胃がん術後の定期検査の必要性について

2016年9月7日

蝉の声もいつの間にかなくなり、
秋の気配を感じることのできる今日この頃、
皆様はいかがお過ごしでしょうか?

おそがけの台風が、
例年とは違う場所で被害をもたらしています。
今年の台風は変な進路をたどりますね。

ちょうど季節の変わり目です。
皆様も体調を崩されませんように、
お気を付け下さい。

 


さて先日、
胃がん術後の患者様から、
また新たに胃がんが見つかりました。

総合病院で胃がんの手術を受けられて以来、
術後は年1回当院で胃カメラをして、
総合病院でCTなど画像診断を受けていました。

前回手術から時間が経っていること、
治療した場所から離れていることから、
前回のがんとは別に新たに発生したものと思われます。

 

せっかく一度手術をして治したのに、
残った胃にまたできるなんてよっぽど運の悪い、
と思われるかもしれません。

しかしこれは意外によくあることなのです。

一般に同じ臓器(この場合なら胃)の違う場所に、
がんが同時に出来る場合を同時性がん、
違うタイミングでできるものを異時性がんといいます。

胃がんの場合多発することが少なくなく、
10~20%に同時性がんがあると言われ、
年3%の割合で異時性がんが起こるとされています。

 

胃がんで多発がんの割合が高い理由として、
胃がんができる胃のほとんどはピロリ菌陽性で、
ベースに慢性胃炎(萎縮性胃炎)があるためと考えられます。

 

一度できた胃がんを治療しても、
胃の粘膜自体が発癌のポテンシャルを持っているので、
胃を全摘しない限り胃がんのリスクは高く残るのです。

そのため一度胃がんを手術で治療しても、
再発ではなく異時性がんがあるために、
また胃がんになる可能性があるのです。

 

一般にがんの治療は術後5年といわれており、
術後5年後に再発がなければ完治したと考えますが、
それは前回治療したがんに関してのみです。

前回とは違う場所に新たにできるがん、
異時性がんに関しては、
それがいつできるかはわかりません。

それなので必ず毎年、
胃カメラを受けることが重要と考えます。

また術後にピロリ菌を除菌すると、
その後の胃がんの発生を約1/3に
減らすことができたという報告があります。

現在ではその報告を根拠に、
胃がんの術後にピロリ菌除菌は、
広く行われていると思います。

過去に胃がんの手術を受け、
ピロリ菌の除菌をされていない方は、
一度医療機関で相談なさってください。

ただし除菌をしても、
胃がんの発生が減るだけで、
ゼロになるわけではありません。

やはり定期的な検査は欠かせないのです。

 

ちょっと説明が長くなりましたが、
まとめますと、

 

①胃がんの術後、
残った胃に新たながんができる可能性は、
比較的高いと考えれらます。

②ピロリ菌を除菌した方が、
新たな胃がんの発生を抑えることができますので、
除菌はするべきと考えています。

③ただし除菌してもゼロにはなりません。
従って術後5年を経過してからも、
必ず定期的な胃カメラを受けてください。

 

個人的な見解ですが、
胃がん診療の一般的な考え方かと思います。
ご参考になれば幸いです。