医療法人博侑会 吉岡医院

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胃アニサキス症の痛みに対する治療

2016年10月7日

あっという間に10月ですね。
早いもので10月17日からは、
インフルエンザの予防接種がスタートします。

これから年末まで、
一気に駆け抜けていきそうで、
何となく焦ってしまいます。

また、この時期、
日によって寒暖の差が激しくなります。
皆さんも風邪にお気を付けください。

 

さて皆さんは、
胃アニサキス症という病気をご存知ですか?

アニサキスとは寄生虫の一種で、
サバ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの
魚介類に寄生しています。

その幼虫は長さ2~3cmの、
白色やや透明がかった白い糸のようみえ、
よくらせんのように巻いてます。

この幼虫が寄生している生鮮魚介類を、
生または加熱冷凍が不十分な状態で食べることで、
アニサキスの虫体が胃の中に入ります。

これが胃の壁に噛みつくことによって、
みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じる、
それが胃アニサキス症です。

よくあるのは夕方サバずしを食べて、
翌日の未明に、
急激な腹痛で発症するパターンです。

この痛みが結構激烈でして、
問診でサバずしを食べた、生のイカを食べた、
その後の激しい腹痛があれば疑います。

治療は胃の壁に噛みついたアニサキスを、
胃カメラで摘出する、
内視鏡的虫体除去が一般的です。

それほどよく見る病気ではないのですが、
私は開業してから6年間に5件ほど、
その患者さんに出会いました。

とにかく痛みが強いので、
できるだけ早く緊急内視鏡を行い、
虫体を発見し摘除します。

個人の診療所では多い方だと思います。
なぜかアニサキスと親和性があるようです。
当院でおこなった治療の様子ご覧下さい。

アニサキス③

矢印の所に、やや透明がかった、
白色の虫体が端っこが胃の壁に入ったように、
とぐろを巻いているのが見えます。

アニサキス②

鉗子でそっとつかみ、
噛みついてる頭の部分をちぎれてしまわないように、
綱引きのように引っ張ります。

胃壁から頭が外れたら、
鉗子とともに体外へ摘出します。
正直気持ちのいい処置ではありません。

1匹とは限りませんので、
隅々まで探します。
すべて取り除いて終了します。

処置後患者さんの胃の痛みは、
多くの場合軽減するか消失し、
胃薬を出して帰宅していただきます。

これが従来の胃アニサキス症の治療です。
とにかく緊急内視鏡が必要なので、
準備や処置で外来がストップし大変なのです。

こうした従来の治療法に加え、
最近では症状緩和目的にステロイドを中心とした、
アレルギー治療が行われているそうです。

アニサキス症はこれまで、
虫体が噛みついた物理的な刺激で、
痛みが生じていると考えられてきました。

しかしどうもそれだけではなく、
虫体の分泌物による局所のアレルギーが、
原因となっている可能性があるそうです。

胃アニサキス症が疑われる腹痛の患者さんに、
ステロイドの点滴をすると、
10~20分で症状が軽減するそうです。

さらに、症状の軽い人には、
ステイロイド入りの抗アレルギー剤を処方し、
一旦帰宅させることもできるそうです。

もしこういう治療が可能であれば、
夜間のなどで内視鏡がすぐにできないとき、
大変メリットがあります。

夜間、休日に内視鏡をすること、
または通常の外来診療中に緊急で行うことは、
結構大変なのです。

病院などマンパワーがあれば対応できますが、
私たちのような小さな診療所では、
結構ハードルの高い処置になると思います。

そういう意味では、
ます症状を緩和する治療を簡単に行えるのは、
医師、患者さん双方に有用だといえます。

確かに組織を採っても痛くな胃粘膜に、
小さな虫が噛みついただけで、
七転八倒する痛みが起こるのは不思議です。

ということは物理的な痛みとは別に、
何か違う要因があるのだと思いますが、
それがアレルギーの関与ということになるのでしょう。

私の経験でもアニサキスの患者さんは、
しばしば蕁麻疹様の皮疹が全身に出ていて、
いかにもアレルギーを起こしている方もいます。

上のアニサキスの写真でも、
実は胃の粘膜はかなり赤くなり、
広範囲で炎症によるむくみが生じています。

そんなところからも、
胃アニサキス症自体がアレルギーによる症状と
考えるのは理にかなっていると思われます。

まだ確立された治療法ではないので、
どこの医療機関でも行っているわけではなく、
慎重に行う必要があるとは思います。

保険診療上でも、
「胃アニサキス症」にステロイド投与は、
適応になっていないと思います。

ただ副作用などが少ない治療法ですので
症状の強い患者様が来られた時には、
投与を検討しても良いのではと考えております。

 

 

時は遡り、
『ミレニアム』や『ノストラダモスの大予言』などが
流行語だった西暦2000年。

私は医師3年目、大学病院の医局人事で、
岐阜県の飛騨高山の病院に赴任し、
外科、救急部で研修を行っておりました。

高山は山間部にあるのにもかかわらず、
なんとアニサキス症の多い土地柄でした。
富山県から新鮮な魚介類が入ってくるのです。

そのようなことは知らず、
初めて腸閉塞の患者さんを担当したときです。

部長から「アニサキスはどうなんだ」と聞かれました。
「アニサキス?ですか」
アニサキスは腸に噛みつくと腸閉塞を起こします。

京都の病院では、
殆んど疑うべき病気ではありませんが、
高山ではよくあることのようです。

アニサキスの抗体価を測ると、
後日上昇しているのが分かりました。
アニサキスが原因だったのかもしれません。

私はお刺身などの魚介類が好きで、
とりわけホタルイカが大好きです。
ホタルイカも春には富山湾から直送されてきます。

しかしアニサキス症の多い土地柄があるので、
知識があるというのにもかかわらず食べてしまい、
アニサキス症になるわけにはいきません。

アニサキス症で仕事ができなくなったり、
ましてや腸閉塞で入院などしてたら大変です。

当時私の上司である恐ろしく怖い外科部長から、
大目玉を食らうこと間違いありません。
当時はまだパワハラという言葉もありませんでした。

これでは私の大好きなホタルイカも、
せっかく富山から新鮮な状態で届くのに、
恐ろしくて口にすることはできません。

そこで高山の赴任が終了した最終日の夜、
同期の外科医とホタルイカの生食に、
チャレンジすることにしました。

これなら万が一アニサキスにあたっても、
恐ろしい外科部長から、
もう怒鳴られることもありません。

生で食べるどころか、踊り食いです。

当時、ホタルイカの踊り食いは富山県では、
条例か何かで禁止されいたと思いますが、
岐阜県ではOKだったのだと思います。

出された生きているホタルイカを醤油につけ、
食べる前に一度じっくり見つめました。
必死でもがくホタルイカは迫力があります。

多少の好奇心と、まあまあの恐怖心と、
結構な罪悪感と、もはや大いなる後悔の中、
2人カウンターに並んで無言で口に入れました。

味は・・・、忘れてしまいました。
初めての踊り食いで、
口の中で動く感覚に違和感を感じました。

アニサキスの虫体が脳裏をよぎります。
外科部長の怒鳴り声が、
遠くで聞こえたような気がしました。

そういえば学生の時の講義で、

アニサキスの疑いがあれば、
よく噛んで食べれば大丈夫です。
と習った記憶があります。

2人とも無言で噛み続けました。

人生で最もよく噛んで食べたかもしれません。
その間頭の中はアニサキスを何とか殺すイメージで、
美味しく感じるわけはありません。

・・・何とか飲み込みました。

その時高山を去るのは私だけで、
付き合ってくれた同期はあの怖い部長のもと、
明日も仕事があります。

高山を去る私のための送別会として、
付き合ってくれているのです。
私は彼に申し訳なく思いました。

そのあとの食事も、
なんとなく気分が盛り上がらないままでした。
・・・結局2人とも腹痛は起きませんでした。

同期の外科医は現在京都の病院で働いていて、
今でも時々会ってその話をします。
二人とも若かったのです(笑)

なお、

ホタルイカはボイルしたり、
生でも一定の条件下で冷凍したものは、
安全とされています。

ホタルイカの踊り食いは、
別の寄生虫の病気(旋尾線虫症)もあり、
皆さんは絶対に食べないようにしてください。

 

注)
後日指摘を受け調べましたところ、
ホタルイカにはアニサキスは寄生しないとのことです。
イカに寄生するのでホタルイカも同様と思っておりました。
旋尾線虫の寄生のため生食が禁止されています。

 

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