京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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若年者のピロリ菌感染とその対策

2016年10月27日

鴨川では少しずつ、
葉っぱの色が変わってきました。
散歩やランニングにはいい季節ですね。

秋の深まりを感じるとともに、
暦の上でも今年もあと2か月となりました。
そろそろ年末ののことも考えないといけません。

 


さて、
今回は若年者のピロリ菌感染について、
少しご紹介いたします。

 

まずはご存知の方も多いと思いますが、
ピロリ菌について簡単にご説明いたします。

ピロリ菌とは胃に棲みついている細菌のことで、
胃がんの原因になっていることより、
感染者には除菌治療が行われています。

ピロリ菌の感染は幼少期、
主に3-5歳の胃酸の少ない時期に
起こると考えれられています。

幼少期に感染したピロリ菌は、
そのまま胃の粘膜にとどまり続け、
慢性胃炎(萎縮性胃炎)をひき起こします。

この慢性胃炎が持続することで、
胃粘膜自身が胃がんの発生母地となると
考えらえています。

ここまでは最近さかんに言われていて、
聞いたことがある方も多いと思います。
ここからが若年者のピロリ菌感染についてです。

ピロリ菌の感染率は世代によって異なります。
団塊の世代、今の65歳以上では、
感染率は80~90%に達します。

しかし、それより若くなると、
感染率は徐々に低下し、
20~30代では20%程度と考えれえています。

この理由は簡単で、
その世代の生まれた時の、
衛生状態によるそうです。

団塊の世代が産まれた戦後すぐは、
日本の衛生状態はあまりよくなく、
ピロリ菌の感染率は発展途上国並みでした。

それが現在は衛生環境が改善し、
主に水が原因と疑われているピロリ菌感染は減少し、
感染率は先進国並みとなっています。

そのため現在の小児における、
ピロリ菌の感染率は、
5%程度ではないかと考えれています。

90% → 20% → 5%
すごい下がりようです!

胃がんの原因のほとんどが、
ピロリ菌感染による萎縮性胃炎と分かっていますので、
今後日本からは胃がんの患者さんは減る予定です。

またピロリ菌を若いうちに除菌してしまえば、
萎縮性胃炎がほんのわずかで済みますので、
胃がんになる可能性が極めて低いそうです。

 

それなので、学生のうちにピロリ菌感染者を見つけ、
除菌してしまえば、今後我が国の胃がんが、
激減するのではないかと考えられています。

それではどのようにして、
若いときに感染者を見つけるかです。

現在考えられている有力な方法としては、
学校の健診の時に提出する尿検査の尿を用いて、
尿中ピロリ抗原検査を行うことが想定されています。

これならピロリ菌検査だけのために、
いちいち採血したりすることなく、コストをかけず、
全員から検体を得ることができそうです。

 

そこで陽性となった方に、
より精度の高い尿素呼気試験を行い、
ピロリ菌感染を確定したうえで除菌を行うのです。

 

全ての高校生などに実施することにより、
完全にピロリ菌をなくすことができれば、
最終的には胃がんを撲滅できると考えられています。

しかし高校に行かなかった人など、
その時に受けられなかった人に対しては、
成人式や結婚時に行うとの案もあるそうです。

 

ただ、今のところ費用等の問題で、
国が先頭に立って制度化されているわけではなく、
一部の自治体で実験的に行われているそうです。

京都では府立医大が中心となり行政にも働きかけ、
一部の私立の高校生を対象に、
試験的に行っているところだそうです。

このような取り組みから方法が確立され、
いずれ国策として全ての若者に、
ピロリ検査がされる日が来るかもしれません。

そうすると、本当に日本から胃がんがなくなる日も、
訪れるのかもしれませんね。
団塊とその次の世代がいなくなってからですが・・・。

 

では、今団塊の世代はどうするか?

今からでも遅くありませんので、
ピロリ菌の検査を受けたことがない方は、
一度医療機関で相談なさってください。

そして感染者は除菌を行い、
自らの胃がんを予防するとともに、
ピロリ菌の撲滅に貢献されてはどうでしょうか。