京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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時代とともに変わるがん検診

2017年2月17日

2月も中旬となり、
夕方も少しだけですが、
日が長くなった気がします。

私は朝型人間なので、
早朝に医院に来て準備するのですが、
その時刻(7時頃)も少し明るくなってきました。

まだまだ寒い毎日ですので、
風邪などにご注意ください。

 

私は医師会の乳がん検診の委員をやっており、
上京区、北区の保健所での乳がん検診に、
年に2回ほどの割合で出務しております。

このたび乳がん検診の方法において、
今後変更される点がありましたので、
皆さんに少しだけお伝えします。

乳がん検診と言えば、
視診、触診を全員に行い、年齢に応じて
エコーやマンモグラフィーを実施します。

この視診、触診を合わせて視触診と言います。
患者さんにはやや負担のかかる検査でしすが、
今回はこれに関する提言がありました。

視診でチェックするのは、
乳房の形に左右差はないか、
腫瘍による引き連れなどがないかです。

触診では、ご存知のように、
乳房を指や手のひらで触れ、
しこりがないか見るものです。

視触診は乳がん診療の基本で、
乳がん検診には欠かせないものでしたし、
当たり前のように実施されてきました。

その視触診に対し厚労省は、
平成27年に以下の報告を行いました。

「視触診は乳がんの早期発見には、
最適な検査法ではなく、
習熟した医師の確保も困難である」

「視触診は、マンモグラフィーによる
検診体制の整備状況を考えると、
必要性は薄れている」

「欧米では視触診を、
併用していない国も多い」

以上のような根拠から、
視触診はあまりやる意味がなく、
実施は推奨しないとしました。

驚いた反面、
納得できるところもあります。

今まで視触診のない乳がん検診は、
正直考えられませんでしたが、
少々「いい加減な診察法」でもあります。

視触診を実施する医師により、
あるいは検査を実施する医療施設間で、
「要精検」率にかなりばらつきがあるのです。

 

どのくらいの硬さのものを「しこり」とするか、
あるいは異常所見とみなすかは、
感覚的なもので医師により変わってきます。

視触診に関しては医師並びに医療機関での、
精度管理が極めて困難という致命的な欠陥が、
以前から指摘されていたのも事実です。

以上の点より、厚労省は今後、

○マンモグラフィーによる検診を原則
○視触診は推奨しない
○超音波検査については、引き続き検討
○対象は40歳以上
○2年に1度とする

などとした提言を行っています。

あくまでも検診の話です。
実際の乳がんの診療の中では、
これからも視触診は重要な診察です。

ということで・・・、
やがて乳がん検診から、
視触診がなくなっていくと思われます。

いつから廃止されるかは、
自治体ごとで変わると思います。

 

 

デスク汗

 

 

 

 

 

また、
以前お伝えしたかもしれませんが、
胃がん検診でも大きな変化がありました。

従来のバリウムによるエックス線検査に加え、
胃内視鏡検査(胃カメラ)による検診が、
認められたことが大きな変更点です。

対象年齢も40歳から50歳に、
引き上げられました。

これはヘリコバクタ―・ピロリの40代の感染率が、
1990年代の60%から2010年代は20%程度に減少し、
40代の胃癌が大幅に減少していることによるものです。

そして検診間隔がこれまでの1年毎から、
2年毎と延ばされました。

このような変更は、体制の構築や
検査医療機関の精度管理を要するため、
急には実施できないと思います。

でもこのように方向性が変わったことは、
今まで無駄の多かった検診を、
より精度高く、効率よく実施する意味で重要です。

検診の検査法や対象者の選別は、
今では化石のようになった古い古い臨床研究に、
基づいていることが少なくないと思っています。

 

そしていったん国家事業で行われたものを、
多くの医療機関や検査機関が事業として取り組んでおり、
簡単には変更がきかないこともあるでしょう。

そういったしがらみや権益を乗り越えて、
検診も時代とともに、
常に変化する必要があると思います。