京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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「機能性ディスペプシア」に使うお薬

2017年4月27日

4月も下旬に差し掛かり、
だんだん暖かくなってきました。
日中は初夏を思わせる日もありますね。

 

ゴールデンウィークが始まります。
今年は後半に連休がありまが、
皆さんご予定は如何ですか?

 

当院は暦通りに診療いたします。
体調悪い方は連休の間の5月2日、3日に
受診なさってください。

 

 

 

 

さて、
前回に引き続き、
「機能性ディスペプシア」のお話です。

 

今回はお薬を中心とした治療について、
私なりのやり方をお伝えいたします。

 

「機能性ディスペプシア」とは、
みぞおちの痛みや胃もたれなどの症状があるのに、
胃カメラでは特に異常を認めないものを言います。

 

機能性ディスペプシアには症状により、
大きく二つのタイプに分けられます。

 

● 食後愁訴症候群
食べた後に胃もたれする症状や、
少し食べただけでお腹がはって、
食べられなくなる症状を言います。

 

● 心窩部痛症候群
みぞおちの痛みや焼ける症状が、
食後だけでなく、
空腹時にも起こることがあります。

 

 

まずはこれらの症状に対し、
どのような状況で起こるかをお聞きしたうえで、
生活習慣に改善できることがないか考えます。

 

食べ過ぎ、早食い、寝る直前の食事など、
誰が考えても無茶な食生活を送っている方は、
まずそこから見直さなければなりません。

 

また、過労や睡眠不足、ストレスなどは、
自律神経が乱れ、
正常な消化管の動きが妨げられます。

 

このような生活が思い当たる方には、
出来るだけ規則正しく生活していただきます。

 

しかし多くの場合、
ライフスタイルを変えるというのは、
そう簡単ではありません。

 

個々の患者様の、
多様なストレスや過労を取り除くことは、
なかなか難しいと思います。

 

そういう私も人のことは言えません(笑)
いつ「機能性ディスペプシア」になっても
おかしくない生活を送っているかもしれません。

 

夜診が終わってからの夕食は遅くなることもあり、
過労というほど働いていませんが、
ストレスがないかというとそういうこともありません。

 

 

「胃の調子が悪いのはそれが原因だ!」
「生活を変えなさい!」と言われても、
正直直しようがないと思います。

 

そこで多くの場合、
お薬による治療を行います。

 

まずはじめに、
胃酸をおさえるお薬を一つ選びます。

 

そして消化管運動改善薬、
つまり胃の動きを良くするお薬を、
一つ選びます。

 

多くの場合この2本立てで、
症状は改善します。

 

私が良く使うのは、アシノンという、
ガスターと同じ種類の、
H2ブロッカーと呼ばれる制酸剤。

 

もう一つはよく使われると思いますが、
ガスモチンという胃運動促進剤です。

 

何となくこの組み合わせを好んでいます。
アシノンには胃の運動を
良くする作用もあるとされえています。

 

またプロトンポンプ阻害剤(PPI)と呼ばれる、
強力に胃酸を抑制するお薬もあり、
H2ブロッカーの効果が弱いときには使用します。

 

ただしこのPPIは、
ピロリ菌の活動をおさえる働きがあり、
ピロリ菌検査が正確にできなくなることがあります。

 

従って胃カメラを考慮する方には、
症状が強くても、
私はまずH2ブロッカーを使用しています。

 

そして胃カメラでピロリ菌の有無を見た後、
必要であればPPIに変更としています。

 

胃酸をおさえ、
ガスモチンで胃の動きを改善させると、
多くの場合症状は良くなります。

 

しかしその効果が不十分な場合は、
更に胃を動かす作用のある漢方薬、
「六君子湯」を追加処方します。

 

漢方薬は飲める方と飲めない方がいるのと、
良く効く方とそうでない方に、
案外二つに別れてしまいます。

 

効く方は続けて処方しますし、
効かない方はさっさと諦め、
次の一手を考えます。

 

最近「アコファイド」というお薬が登場しました。
最近と言っても発売が2013年の春ですから、
もう4年ほどになりますが。

 

このお薬はアセチルコリンという、
胃の動きを良くする物質の作用を高めるお薬で、
ガスモチンと同じように胃運動促進剤です。

 

 

1日3回食前に内服し、
食後の膨満感や早期満腹感を改善する、
機能性ディスペプシアのためのお薬です。

 

ガスモチンと同等かそれより良く効く印象で、
信頼感の高い薬剤なので、
もっと早い段階で使用すればいいのですが
実は少し処方しにくい理由があります。

 

それはこのアコファイドを投与するためには、
事前に胃カメラをすることが義務づけられていて、
胃潰瘍やがんなどの病気がないことを、
確かめなければならないからです。

 

前回もお話ししましたが、
「機能性ディスペプシア」は名前の通り、
胃の機能的な障害から来ます。

 

しかし胃の痛みには、
胃潰瘍やがんなど直接胃の粘膜に障害を来す、
「器質的疾患」の方もおられます。

 

その様な方にはこのお薬は、
処方できないことになっているのです。
不可解な保険上のルールが存在するのです。

 

このような縛りのあるお薬は珍しいですね。

 

ガスターやPPIでは、
処方するのに胃カメラは必要ないですし、
他の多くのお薬でも同様です。

 

アコファイドはせっかくいいお薬なのに、
このような縛りがあるために、
出したい時に出せないお薬となってしまいました。

 

その胃カメラの結果も、
10年前の結果では通りません。

 

少なくとも1年から2年以内に受けた結果で、
器質的疾患のないことが確認されている必要があり、
処方するには、レセプトに胃カメラを実施した日と、
その所見をコメントしなくてはならないです。

 

これは医師にとっても患者様にとっても、
少しハードルが高いかと思われます。

 

特に患者様には、たいした異常もないのに、
1~2年に1回の割合で、
胃カメラをしていただく必要はないと思われます。

 

また器質的疾患があるから、
機能的疾患はないと考えるのも、
無理があります。

 

たとえ小さな胃潰瘍がある方でも、
機能性ディスペプシアを患っておられる方は、
きっといると思います。

 

しかしながら現在の保険診療の範囲では、
器質的疾患に投与してはならないことになっています。
この辺も変わった判断だと思っています。

 

アコファイドに関してはいいお薬なので、
メーカーや学会などが声を上げ、
規制緩和がされるといいと思います。

 

その他の機能性ディスペプシアに対する薬としては、
ストレスや不眠に対する治療として、
抗うつ薬や抗不安薬が使われることもあります。

 

特に前述の胃薬を使用しても改善しない方は、
心療内科的な治療が有効となることもあり、
専門機関にお願いすることもあります。

 

 

いつもどおり、
長くなってしまいました・・・。

 

以上機能性ディスペプシアに対する、
お薬を中心としたお話をいたしました。

 

この病気はストレスの多い現代社会では、
かなり多い病気だと思います。

 

皆さんも何か症状があるときには、
一度消化器内科でご相談なさってください。
きっといいお薬が見つかると思います。