京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

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新しい便秘薬:胆汁酸トランスポーター阻害薬とは?

2018年5月7日

ゴールデンウイークが、
あっという間に終わってしまいました。
皆様はどこかにお出かけされましたか?

 

私は連休の終わりに、
丹後半島の温泉に1泊で出かけたくらいで、
それ以外は家でゆっくりと過ごしました。

 

日頃のちょっとした緊張から解放され、
心も体もリフレッシュできましたので、
また本日からの診療に、
頑張って取り組んでゆきたいと思います。

 

 

さて、
シリーズでお送りしております
便秘薬のお話3回目です。

 

今回は先月に発売されたばかりの
最新の便秘薬について
ご紹介いたします。

 

その便秘薬とは、

 

4月19日EAファーマ、持田製薬から発売の、
胆汁酸トランスポーター阻害薬、
商品名「グーフィス錠」(エロビキシバット)です。

 

 

「胆汁酸」とは
あまり聞きなれない名前と思います。

 

胆汁酸は、
肝臓でコレステロールから
合成される物質のことです。

 

 

胆汁酸は肝臓で合成された後、
胆汁の主成分として胆嚢に蓄えられ、
食事に伴って胆管を経て十二指腸へ排出され、
食物脂肪の消化、吸収に関与します。

 

排出された胆汁酸は小腸で約95%が再吸収され、
門脈を経由して肝臓に戻り再び胆汁中に分泌されます。

 

肝臓で作られ → 十二指腸に排出され →
小腸で吸収され → また肝臓に戻ります。
これを「腸肝循環」と呼んでいます。

 

 

一方、再吸収されなかった胆汁酸は大腸へ到達します。

 

大腸管腔内で胆汁酸が増加すると、
胆汁酸の働きによって大腸管腔内へ水分が分泌され、
また消化管運動が促進することが知られています。

 

 

胆汁酸トランスポータ阻害薬は、
小腸での胆汁酸の再吸収を阻害しますので、
大腸に流れる胆汁酸が増加します。

 

 

グーフィス2
(持田製薬 グーフィス錠の薬効薬理より)

 

 

図では上のようになりますが、
いずれにしても理解はなかなか難しいです。

 

 

皆様は細かいことは省略していただいて、
結果だけ知っていただければ結構です。

 

 

まとめると「グーフィス」の投与により
胆汁酸の大腸への流入が増加することにより、
次の2つの効果があるとされています。

 

 

① 大腸内の水分分泌を促進

② 消化管運動の促進

 

 

この2つの作用を、メーカーの方では、
「デュアルアクション」と呼んでいます。

 

つまり「グーフィス」は、
便を柔らかくする、腸の動きを良くするという、
「デュアルアクション」により便秘を改善します。

 

この作用の薬は世界で初めてで、
全く新しい便秘薬ということになります。

 

 

次に内服するタイミングです。

 

胆汁酸は肝臓で作られ、
胆のうに一時的にプール濃縮され、
食事とともに十二指腸に排出されます。

 

主に食事の中の油成分、
脂肪酸、脂溶性ビタミン、コレステロールの
腸管からの吸収を助けます。

 

 

従って食事により排出される胆汁酸に、
効率よく働くように、
このお薬は食前に飲むようになっています。

 

(食後の投与ではお薬が効く頃には、
胆汁酸はすでに小腸から吸収されてしまい、
お薬の効果が十分発揮できません。)

 

作用は比較的早く、
朝食前に内服すれば昼頃の排便が
期待できるとされています。

 

そのため内服のタイミングは、
どの食前(朝・昼・夕)にするかは、
その方の排便状況により変わると思います。

 

朝にすっきり排便を期待するためには、
夕食前に内服するということになるでしょうか。

 

逆に他の下剤でよく内服される、
眠前投与は効果が少ないものと考えられます。
(全くないわけではないと思いますが)

 

 

内服する量ですが、
通常2錠を1回に内服します。
1錠が5㎎なので標準投与量は10㎎です。

 

適宜増減可能ですので、
効果が強すぎれば1錠に減量し、
弱すぎれば3錠に増量可能です。

 

 

発売前の臨床試験の結果では、
1錠と2錠には効果に差がありますが、
2錠と3錠にはそれほど差が出ないそうです。

 

従って2錠で効果が少なければ、
3錠にすると薬代が1.5倍になり高額になりますので、
別のお薬を追加する方が良いと思われます。

 

 

また胆汁酸は脂質の吸収と関係しますので、
胆汁酸の吸収をを阻害するこのお薬で、
コレステロールの低下も期待できるかもしれません。

 

 

それですので、
少しコレステロールが高めの、
比較的高度の慢性便秘の方には、
メリットが大きいのではないでしょうか。

 

 

今までの下剤は、
便の水分を増やして柔らかくするもの、
あるいは腸管を刺激し出し易くするもの、
それぞれはありました。

 

しかしこのお薬のように、
この2つの作用を両方持つ薬はなく、
そういう意味で存在感があると思われます。

 

 

またそれまでのお薬のように、
電解質に異常をきたしたり、
だんだん効きにくくなる、耐性の副作用が、
少ないとされています。

 

 

今後は使用していく中で、
どの程度の便秘に対し効果があるのか、
他の下剤との相性など、
見ていく必要があると思われます。

 

新薬は発売から1年間は、
一度に処方できる日数が14日間の
制限がついています。

 

従って
しばらくはきめ細かい管理が
中心になると思われます。

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

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