京都市上京区の胃カメラ・大腸カメラ・婦人科・一般内科・小児科 吉岡医院

医療法人博侑会 吉岡医院
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高コレステロール血症の目標値について

2018年8月7日

1年で最も暑い季節なりました。

日本列島は連日の猛暑、
特に京都は毎日のようにニュースで、
全国的にも暑い地域の一つになっています。

 

何か、「暑い」を通り越して、
「熱い」という感じがします。

 

水道の水もわざわざ給湯器で熱くしたような、
ぬるいというよりはやや温かいお湯が出てきて、
この熱エネルギーは何か別の役に立たないかと
思ってしまいます。

炎天下に駐車した車の中など、
あっという間にサウナのようになります。
このエネルギーで車は走らないのでしょうか?

 

つい愚痴が出てしまいます。

 

ご高齢の方はお薬をもらいに
クリニックに来られるのも命がけです。
夜診の時間を利用するなどして、
無理なさらないでください。

 

 

さて今回は、
高コレステロール血症についての
お話です。

 

ちょっと難しいと思われるかもしれませんが、
お薬を飲まれている方も多いと思いますので、
お付き合いいただければと思います。

 

「高コレステロール血症」は、
皆さんがよく知っている「高脂血症」と、
ほぼ同じと考えてください。

厳密には「高脂血症」には
中性脂肪が高い状態も含まれています。

 

「高コレステロール血症」は、
総コレステロールが220mg/dl以上、
LDLコレステロールが140mg/dl以上、
また、HDLコレステロールが40mg/dl未満
のことを言います。

HDL低値も「高コレステロール血症」に含まれ、
高コレステロールに呼び方が合わないことより、
今では主に「脂質異常症」と呼んでいます。

 

一般的には、
LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」、
HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と、
理解しやすいような呼び方があります。

 

さて、
日常診療でよく見られる高コレステロール血症は、
年齢や肥満によりおこる内臓脂肪の増加に伴い、
血中のLDLコレステロールが増加した状態です。

 

では問題です。
この数字が高い(140以上)だと、
何故ダメなのかわかりますでしょうか?

 

答えは、
「動脈硬化をひき起こすから」です。

よくお聞きになるフレーズです。

では、
動脈硬化が進むとどうなりますか?

答えは、
「心筋梗塞や脳梗塞になり、
命に係わる事態になることがある」です。

 

つまり高コレステロール血症で
治療としてLDLを下げなければならない理由は、
「心筋梗塞や脳梗塞を予防するため」です。

 

ここまではおさらいですが、
なんとなくイメージしていただけましたでしょうか。

 

LDL1

 

血管の壁に過剰なLDLがプラークを形成し、
血管の内腔が狭くなり、
血栓形成で閉塞している図です。

これが心臓の血管で起こると心筋梗塞に、
脳内の血管で起こると脳梗塞となり、
これらを予防するために治療が必要なのです。

 

 

では治療においては、
一律にLDLを140以下に
下げればよいのでしょうか。

 

これは「No」です。

 

動脈硬化が起こるかどうかは、
いくつかのリスク要因があります。

このリスクはそれぞれの方で異なりますので、
その方にあったLDLの目標の数値があります。
したがって一律140以下ではありません。

 

メジャーなリスクとしては、
・糖尿病
・慢性腎不全
・非心原性脳梗塞
・末梢性動脈疾患

これらの病気ををすでにお持ちの方は、
まずのちに出てくる分類で、
「高リスク」に分類されます。

 

「高リスク」に分類されると、、
より心筋梗塞になりやすいということで、
LDLをもっと低くしないといけないのです。

 

ではご自身はどのくらいリスクがあり、
LDLをどれくらいの値に
しなければならないのでしょうか。

 

ここで用いるのが日本動脈硬化学会が出している
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」です。

 

以下にチャートを示します。

これを順番にたどっていくと、
それぞれの方でどの程度までLDLを下げるのか、
目標値が示されています。

 

LDL2

 

まず脂質異常のある方は下に進み、
「冠動脈疾患の既往があるか?」
に対し答えます。

冠動脈疾患の既往というのは、
簡単に言うと今までに
心筋梗塞になったことがあるかです。

ある場合は二次予防ということになり、
あとは関係なく高リスク群にはいります。

 

ちなみに「二次予防」というのは、
過去に病気になった方が、
また再発しないために予防することです。

今までその病気になったことがない方が、
ならないように予防するのは、
「一次予防」と呼ばれれています。

二次予防の方は、
一度その病気になっているわけですから、
リスクは高くより厳格な予防が設定されます。

 

これを読まれているほとんどの方が、
「なし」、「なし」と進んで、
一番下の表にたどり着くと思います。

ここで「吹田スコア」という聞きなれない
言葉が出てきます。

吹田スコアの詳細は省略しますが、
大勢の方の研究から得られたデータをもとに、
危険因子を点数化したものです。

吹田スコアから得られる点数は、
下の表を頼りに計算してください。

 

LDL3

 

ちょっと小さくて見にくいでしょうか。
スマホの方は画面を横にするなどして拡大し、
順番に点数をつけてください。

例えば私ですと
① 30点 ② 0点 ③ なし ④ 0点
⑤ -5点 ⑥ 5点 ⑦ なし ⑧ なし
合計 30点 となります。

ちなみに誕生日が来れば45歳になりますので、
①が38点となり、
合計は38点に上がります。

こんな感じでスコアをつけます。
皆さんはいかがでしたでしょうか?

 

このスコアが40点以下が低リスク、
41-55点が中リスク、56点以上が高リスクと、
3つグループに分かれます。

 

ここでこの3つのグループで、
目標となるLDLコレステロールの値が、
ようやく決まってくるのです。

 

LDL4

 

「LDL-C」と書かれた数値を見てください。

低リスクの方は、
ちょっと大目に見てもらえ、
160以下となっています。

つまり、140以下に下げなくてもよい
ということです。

中リスクの方は、
標準的な140以下とされています。

高リスクの方は、
少し厳しめの120以下です。
これぐらい抑えないと危険ということです。

さらに「二次予防」の方は、
100以下とかなり厳しい
目標設定がなされています。

()内の70以下は、
家族性高コレステロール血症の方です。

 

また、参考になるかもしれませんが、
下のようなグラフがあります。

 

LDL6

 

生涯のコレステロールの数値の累積が、
ある一定の数値に達すると、
心筋梗塞や脳梗塞を
起こしやすくなるというものです。

数値の計算方法は、
「その時のLDLの値」×「年数」
です。

LDLが高いと、
心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなる水準に
早い時期に到達するということになります。

したがってLDLコレステロール値は、
その時に適正にする必要もありますが、
過去の値がどうだったかも関係するのです。

 

また次回にでもお話ししようと思いますが、
生まれつきコレステロール値が非常に高い、
「家族性高コレステロール血症」という
遺伝性の病気があります。

その方たちは若いころからLDLが180や200など、
極めて高い値が続いています。

そのためグラフのオレンジの線のように、
人生の若いうちに(30代とかで)、
心筋梗塞や脳梗塞を発症することがあります。

 

このグラフを見ると、
普段からLDLを適正な数値にしておくことが、
将来においても重要ということがわかります。

 

ずっと数値が高かった方は蓄積が多いので、
かなり数値を下げないと、
寿命までに発症するということになります。

 

ということで今回は、
LDLコレステロール値は、
なぜ下げないといけないか、

またそれぞれの方で、
どのくらいまで下げるといいのか、
についてご説明いたしました。

ちょっと難しい話だったかもしれませんが、
皆様の参考になれば幸いです。

 

 

次回のテーマは、
「家族性高コレステロール血症」
についてお話する予定です。

今回は治療については
あまり触れいていませんので、
また次の機会でご説明できればと考えています。

 

関連ブログ:
家族性高コレステロール血症について